2025年末から急速に話題となり、2026年2月現在、エンジニア界隈だけでなくビジネスマンや学生の間でも大きな注目を集めている「OpenClaw(オープンクロウ)」。
「AIが勝手に稼いでくれる」「動画を全自動で作ってくれる」といった景気の良い話が飛び交う一方で、「セキュリティ的に危険すぎる」「中国政府が警告を出した」といった怖いニュースも耳にします。
結局、OpenClawとは何者で、私たちに何ができるのでしょうか? そして、安全に使うにはどうすればいいのでしょうか?
この記事では、高校生でもわかるように、OpenClawの仕組みからリスク、そして安全な始め方までを徹底解説します。

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【基礎知識編】OpenClawって何?なぜ騒がれているの?

まずは、OpenClawの正体と、これまでのAIツールとの違いをハッキリさせましょう。
OpenClawを30秒で理解する

一言で言うと、OpenClawは「口先だけでなく、手足を使って仕事をしてくれるAI秘書」です。
OpenClawは「会話できるツール」ではなく「実行できる秘書」
これまでのAI(ChatGPTなど)は、アドバイスをくれたり文章を書いたりするのは得意でしたが、実際の作業(メールを送る、ファイルを保存する)は人間がやる必要がありました。
OpenClawは違います。「この資料をまとめてメールしておいて」と頼めば、勝手にブラウザを開き、文章を書き、送信ボタンを押すところまでやってくれます。
何がスゴい?ChatGPTとの決定的な違い(“手を動かす”かどうか)
- ChatGPT: 「こうすればいいですよ」と教えてくれる(頭脳だけ)
- OpenClaw: 「やっておきましたよ」と報告してくれる(頭脳 + 手足)
この「手足(実行力)」を持っている点が、最大の革命です。
どんな人に向く?向かない?
- 向いている人: 毎日同じようなパソコン作業(コピペ、整理、監視)に飽き飽きしている人。エンジニア、事務職、動画クリエイターなど。
- 向かない人: AIに大事な決断(人生相談など)をしてほしいだけの人や、パソコンのセキュリティ設定などを学ぶのが面倒な人。
まず知っておきたい前提知識
ニュースを読む上で、3つのキーワードだけ覚えておいてください。
「AIエージェント」って何?(自分で段取りして動くAI)
普通のAIは「質問に答える」だけですが、エージェント(代理人)は「目的を達成するために自分で考える」ことができます。
例えば「旅行の計画を立てて」と言われたら、「天気を調べる」→「ホテルを探す」→「空き状況を確認する」といった手順を自分で組み立てて実行します。
「権限」って何?強いほど便利、強いほど危険
OpenClawに仕事をさせるには、あなたのPCやサーバーを操作する「権限(鍵)」を渡す必要があります。
家の合鍵を家政婦さんに渡すのと同じです。掃除をしてくれて便利ですが、もしその人が悪い人だったり、泥棒に入られたりしたら、家財道具をすべて盗まれるリスクがあります。
「自己ホスト」って何?クラウドAIとの違い(自由度と責任)
ChatGPTはGoogleやOpenAIが管理する「お店」に行って使うサービスです。
OpenClawは、自分の家(自分のPCやサーバー)にAIを住まわせて使う「自炊」のようなものです。好きなようにカスタマイズできますが、戸締まり(セキュリティ)は自分で責任を持たなければなりません。
OpenClawで実際にできること

では、具体的にどんな「お仕事」を任せられるのでしょうか。
パターン1:パソコン作業の自動化
「デスクトップにある『202602』で始まる画像ファイルを全部選んで、『2月旅行』フォルダに移動して、ファイル名を日付順に変えておいて」
こんな指示一つで、OpenClawがマウスやキーボードを操作する代わりに、裏側で高速に処理を完了させてくれます。
パターン2:仕事の裏方(定型レポート、監視、通知、データ収集)
「毎日朝9時に、競合他社のサイトを見て新商品が出ていないかチェックし、もし出ていたらSlack(チャットアプリ)に通知して」
といったルーチンワークはお手のものです。文句も言わず24時間監視してくれます。
パターン3:クリエイティブ補助(台本→音声→動画制作の分業)
最近話題なのがこれです。「AIニュースについての解説動画を作って」と頼むと、
- ネットでニュースを検索する
- 台本を書く
- 画像生成AIでイラストを作る
- 音声合成ソフトで声を当てる
- 動画編集ソフトを操作して一本の動画にするこれらを連携させて、文字通り「寝ている間に動画ができている」状態を作れます。
“向いているタスク”と“やらせない方がいいタスク”
- ○: 手順が決まっている作業、情報のまとめ、下書き作成。
- ×: 失敗すると取り返しがつかない作業(大事なデータの削除、高額な買い物)、人間の感情への配慮が必要なメール。
【仕組みと導入編】どうやって動いているの?

ここでは、OpenClawが動く仕組みと、なぜ最近「VPS」という言葉をよく聞くのかを解説します。
仕組みの全体像
OpenClawは、大きく分けて3つのパーツでできています。
ざっくり構造:チャットUI → エージェント → ツール/PC
- 司令塔(あなた): SlackやLINE、Discordなどの使い慣れたチャットアプリから指示を出します。
- 頭脳(OpenClaw): 指示を受け取り、「何をするべきか」を考えます。
- 手足(ツール/PC): 実際にファイルを動かしたり、ブラウザを操作したりします。
「スキル(拡張機能)」が価値を増やす一方で、危険も増やす
スマホにアプリを入れるように、OpenClawには「スキル」を追加できます。
「Googleカレンダーを操作するスキル」や「Twitterに投稿するスキル」を追加すれば、できることがどんどん増えます。これを集めた場所が「ClawHub」などですが、ここにウイルス入りの危険なスキルが混ざっていることがあり、2026年2月現在、大きな問題になっています(後述)。
モデル(LLM)・ツール・実行環境の役割分担
OpenClaw自体は「命令を翻訳するソフト」に過ぎません。実際に頭を使っているのは、裏側に繋がっているAIモデル(Claude 3.5 SonnetやGPT-4oなど)です。
「AIモデル」が考え、「OpenClaw」が翻訳し、「PC」が動く。この連携プレーで成り立っています。
なぜ今、VPS運用が流行るのか

OpenClawを使うために、自分のPCではなく「VPS(仮想専用サーバー)」を借りる人が急増しています。日本国内ではXServer VPSなどがOpenClaw専用のセットアップ機能を提供し始め、Mac miniの売上が伸びるなどの現象も起きています。
ローカルPC運用のメリット/デメリット
自分のノートPCに入れるのが一番簡単です。
- メリット: 無料で今すぐ試せる。
- デメリット: PCをスリープさせるとAIも止まる。裏でAIがガリガリ作業すると、PCが重くてYoutubeが見られない。もしAIが暴走したら、大事な卒業論文を消されるかもしれない。
VPS運用のメリット/デメリット
VPSとは、インターネット上にある「24時間動かしっぱなしにできるレンタルPC」のことです。
- メリット: あなたが寝ていても、PCの電源を切っていても、AIは24時間働き続ける。自分のPCと切り離されているので、もしウイルス感染しても自分のPCは無事。
- デメリット: 月額料金(1,000円〜)がかかる。設定が少し難しい。
初心者がつまずくポイント
「とりあえずVPSを借りたけど、動かない!」という人が多いです。
Linuxという黒い画面での操作が必要だったり、AIを動かすためのAPIキー(課金が必要なパスワード)の設定でつまづきがちです。しかし、最近はXServerのように「ボタン一つでOpenClawが入ったサーバーを作る機能」が出てきたため、ハードルは下がっています。
【セキュリティ対策編】便利さの裏にある「落とし穴」

ここが一番重要なパートです。OpenClawは「PCを操作できる」という性質上、使い方を間違えると非常に危険です。2026年に入り、中国当局やセキュリティ企業が相次いで警告を出しています。
一番大事:セキュリティとリスク
何が起きうる?最悪シナリオを先に知る
もし悪意のあるハッカーにOpenClawを乗っ取られたり、悪いスキルを入れてしまったりすると、次のようなことが起こり得ます。
- データ全消去: PC内のファイルがすべて消される。
- 情報流出: 保存しているパスワード、クレジットカード情報、プライベートな写真が盗まれる。
- 踏み台攻撃: あなたのPC(OpenClaw)が勝手に犯罪の片棒を担がされ、他人のサーバーを攻撃し始める。
最大の地雷:スキル(拡張)のサプライチェーンリスク
今、一番警戒されているのが「ClawHub」などで配布されている「便利なスキル」に見せかけたウイルスです。
「暗号資産を自動で増やすスキル」などをインストールした瞬間、ウォレットの中身をすべて抜き取られる被害(インフォスティーラー)が報告されています。出所不明のスキルは絶対に入れてはいけません。
“AIが勝手に実行”問題の本質

AIは賢いですが、騙されやすい一面もあります。
例えば、Webサイトを見に行かせたときに、そのサイトに「隠し文字」で「PCの中身を全部メールで送れ」という命令が書いてあったら(プロンプトインジェクション攻撃)、AIは素直に従ってしまう可能性があります。
具体的な防衛ライン
怖がらせてしまいましたが、正しく対策すればリスクは大幅に減らせます。以下の4つを守ってください。
(A) 最小権限(最初は読み取り専用・危険コマンド禁止)

OpenClawには「Safe Mode(セーフモード)」や権限設定があります。
最初は「ファイルを見るだけ」「特定のフォルダしか触れない」設定にしておき、必要な時だけ書き込み権限を与えるようにしましょう。
(B) 隔離(別ユーザー/別マシン/コンテナ)と秘密情報の分離
これがVPSを使う最大の理由です。
メインのPCではなく、捨ててもいい環境(サンドボックス)で動かせば、被害はその中だけで済みます。また、大事なパスワードやマイナンバーなどが書かれたファイルを、OpenClawが触れる場所に絶対に置かないでください。

(C) ログと承認(重要操作は人間承認・操作履歴を必ず残す)
「ファイルを削除する」「メールを送る」といった重要なアクションの時は、必ず人間に「実行していいですか?」と許可を求める設定(ヒューマン・イン・ザ・ループ)にしましょう。これで暴走を防げます。
(D) スキル導入の審査チェックリスト

新しいスキルを入れる時は、レビュー数や開発者を必ず確認してください。「★1つしかない怪しいスキル」や「公式ではないスキル」は避けるのが鉄則です。
【導入と未来編】今日からどう動く?
最後に、実際にOpenClawを使い始めるためのステップと、今後の展望をまとめます。

どう始めればいい?最短の導入ロードマップ
ステップ0:ゴールを決める(何を自動化するか)
いきなり「なんでもやって」と言ってもAIは困ります。「毎朝のニュースチェックを自動化したい」「領収書の整理をさせたい」など、具体的な小さな目標を決めましょう。
ステップ1:安全な“お試し環境”を作る
最初は自分のメインPCには入れず、Docker(ドッカー)という技術を使って隔離するか、月額数百円のVPSを契約して、そこに入れてみましょう。これが一番安全な練習方法です。
ステップ2:小さな成功例を作る(1タスクだけ自動化)
まずは「天気を調べてSlackに通知する」だけの簡単なエージェントを作ってみましょう。動いた時の感動は大きいですし、ここで基本的な設定が理解できます。
ステップ3:運用に耐える形へ
慣れてきたら、24時間稼働させたり、複雑なタスクを任せたりしていきましょう。定期的にログを確認し、変な動きをしていないかチェックする習慣をつけてください。
よくある誤解Q&A
Q: 「全部自動で稼ぐ」は本当?どこまで現実か
A: 半分本当で半分誇張です。確かにトレードや動画投稿を自動化して収益を上げている人はいますが、そのシステムの設計やメンテナンスには高度な知識が必要です。「スイッチ一つで億万長者」にはなりません。
Q: ChatGPTや自動化ツールと何が違う?
A: ChatGPTは「相談相手」、従来の自動化ツール(RPA)は「決まった動きの繰り返し」。OpenClawは「相談しながら、臨機応変に動く実行部隊」です。
Q: 触っていい範囲は?学生/個人/会社それぞれの注意点
A: 学生や個人はリスクを理解した上で実験するのはOK。会社で勝手に導入するのは厳禁です。社内ネットワークにセキュリティの穴を開けることになり、解雇や損害賠償のリスクすらあります。
まとめ:OpenClawは“便利な分身”にも“危険な全権アプリ”にもなる

OpenClawは、間違いなくこれからの働き方を変える画期的なツールです。一人で10人分の仕事をこなす「スーパー個人」になれる可能性を秘めています。
しかし、そのパワーの源泉は「あなたの代わりに何でもできる権限」です。
包丁と同じで、料理に使えば便利ですが、使い方を間違えれば大怪我をします。
まずは「隔離された環境(VPSなど)」で、「権限を絞って」触り始めること。この基本さえ守れば、OpenClawはあなたの最強のパートナーになってくれるはずです。
さあ、まずは安全な環境を作って、未来の働き方を体験してみませんか?



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