2026年1月は、動画生成AIにとって明確な転換点となりました。これまでの「何が出るかわからない」生成実験のフェーズから、狙った映像を確実に作る「制作」のフェーズへと移行したからです。
画質が向上したのは当然ですが、それ以上に重要なのは「制御性(言うことを聞くか)」と「統合(音や編集もできるか)」の進化です。
顔が崩れない、実用的な縦型動画が作れる、音声まで一括で生成できる。これらが同時に実現したことで、PC一台で完結する映像制作の可能性は劇的に広がりました。

この記事では、今月リリースされた8つの重要なアップデートを整理し、「結局、どのツールを使えば何が作れるのか」という結論を明確に提示します。
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画質の話だけじゃない:制作の「速さ」と「再現性」が一気に変わった

従来のアップデート競争は「4K対応」や「フレームレート」といった画質面が中心でした。しかし今回の焦点はそこではありません。
- 指示への忠実性:プロンプトや参照画像を無視しない。
- 一貫性の維持:カットが変わってもキャラクターの顔や服装が維持される。
- ワークフローの統合:映像だけでなく、音声や編集までAI上で完結する。
クリエイターが現場で直面していた「きれいだが使えない」という壁が、ついに取り払われ始めています。
最初に結論:あなたの目的なら“これ”を触ればいい

ツールの選択に迷う時間を省くため、目的別の最適解を提示します。
「シリーズ作品を崩さず続けたい」
→ Vidu Q2 Pro 既存の動画をベースに編集・変換を行う機能(Video-to-Video)が卓越しています。「第1話と第2話でキャラクターの顔が別物になる」という生成AI特有の欠点を回避し、安定したシリーズ運用が可能です。
「完成品を一発で作りたい」
→ Vidu Q3 映像生成と同時に「効果音・セリフ・BGM」まで生成可能です。複数のソフトを行き来する手間を省き、ワンストップでショート動画を完成させたい場合に最適です。
「映画のような没入感を作りたい」
→ Runway Gen-4.5 i2v 圧倒的な映像美とシネマティックな表現力が特徴です。長編のストーリーテリングには制御の難しさがありますが、視聴者を惹きつける「決めカット」の生成においては右に出るものがいません。
「縦型ショート動画を量産したい」
→ Veo 3.1 スマートフォン視聴に最適化された「9:16」のアスペクト比をネイティブでサポートしています。4Kアップスケールにも対応しており、TikTokやReels運用において即戦力となる品質です。
「線画の魅力を活かしたい(アニメ・漫画)」
→ Niji Journey V7 アニメーションやイラスト調の動画生成において、線の美しさと情報の密度が維持されます。複雑な描き込みが動画化によって潰れることがなく、作画品質を重視するクリエイターに適しています。
「キャラクター固定で量産したい」
→ Kling O1(+Agent) 特定キャラクターの画像を読み込ませた際の再現度が非常に高く、指示通りの動きを生成します。オリジナルキャラクターを用いた動画展開において、最も信頼できる選択肢です。
アップデート8選:“何が変わったか”を1分で把握
ここからは、1月に発表された8つの重要なアップデートについて、技術的な進化とそれが制作現場に何をもたらすのかを解説します。単なる機能追加ではなく、制作の前提を変える変更点に着目してください。
① Kling O1:参照の効きが上がって「狙い撃ち」が現実的に

従来の動画生成は、プロンプトを入力してから何が出るか祈るような側面がありました。しかし、Kling O1のアップデートにより、参照画像(Reference Image)への追従性が劇的に向上しました。 画像で指定したキャラクターのデザイン、服装、構図を維持したまま動かす能力が高まったため、何十回も再生成する手間が減り、クリエイターが意図した通りの映像を「狙い撃ち」で生成することが現実的な作業ラインに乗りました。
② Runway Workflows:生成より“制作ライン化”が革命

Runwayが強化しているのは、単発の動画生成機能ではなく「仕組み作り」です。Workflowsは、ノード(処理の箱)を線で繋ぐことで、一連の作業を自動化する機能です。 例えば「画像を生成→動画化→高画質化→特定のエフェクトを追加」という手順を一度組んでしまえば、あとはボタン一つで量産が可能になります。職人的な手作業から、工場のような制作ラインの構築へとシフトする重要な機能です。
③ Niji Journey V7:線が潰れない、情報量が崩れない

アニメーションやイラストスタイルの生成において、Niji Journey V7は圧倒的な強みを見せました。特筆すべきは「線の解像度」と「書き込みの維持」です。 通常、イラストを動画化すると細い線がぼやけたり、細部の装飾が潰れたりしがちですが、V7はそれらを維持したまま動かせます。大画面で見ても耐えうる情報量を持ったアニメーション素材が、個人で生成可能になりました。
④ Veo 3.1:縦型9:16×複数参照でショート運用が現場仕様に
GoogleのVeo 3.1は、現代の動画需要に合わせて縦型(9:16)への対応を強化しました。無理やりトリミングするのではなく、最初から縦長で構図を作れるため、被写体が画面外に見切れることがありません。 また、複数の画像を同時に参照させることで、キャラクターと背景のスタイルを別々に指定するなど、より細やかな制御が可能になり、SNS向けのショート動画運用において即戦力となる仕様です。
⑤ Runway Gen-4.5 i2v:シネマ感は強い、ただし言うことも聞かない

Gen-4.5の「Image to Video(i2v)」機能は、実写映画と見紛うほどの映像の質感(Visual Fidelity)を実現しました。光の表現やカメラワークの重厚感はトップクラスです。 一方で、ユーザーの細かな指示よりも「AIが考えるかっこいい動き」を優先する傾向があり、制御には難しさがあります。思い通りに動かすというよりは、想像を超えるワンショットを期待して使う「決め技」的な位置づけです。
⑥ Vidu Q2 Pro:動画を“素材”として扱える編集モードに突入
Vidu Q2 Proの革新点は、Video-to-Video(動画から動画への変換)の精度です。これは「0から1を作る」のではなく、既存の動画の一部を修正したり、画風だけを変えたりする「編集」のアプローチです。 キャラクターの動きはそのままに背景だけを差し替える、実写動画をアニメ風に変換するといった作業が実用レベルで行えるようになり、生成AIを「高度なエフェクトツール」として使えるようになりました。
⑦ Kling Agent:会話だけで「絵→コンテ→動画」まで押し切れる
Kling Agentは、チャット形式で対話しながら動画を作れる機能です。単にプロンプトを受け付けるだけでなく、AIが「どのようなストーリーにしますか?」「この構図はどうですか?」と提案を行い、絵コンテの作成から動画化までをリードしてくれます。 専門的なパラメータ操作を覚えなくても、監督のように指示を出すだけで制作が完結するため、動画制作の敷居を大きく下げました。
⑧ Vidu Q3:音と口と映像が同時に揃う=納品が速い
これまで「映像」「音声」「リップシンク(口パク)」は別々のツールで作って合成するのが常識でしたが、Vidu Q3はこれらを一度に生成(Native Audio-Video)します。 映像の内容に合わせて効果音やBGMがつき、キャラクターがセリフに合わせて口を動かす状態で出力されるため、編集工程が大幅に短縮されます。「速さ」と「完結力」において、現在の動画生成AIの最先端を行く仕様です。
どこが進化した?5つの比較軸で“強み”を見える化

「全部すごそうに見えて、違いがわからない」という人のために、5つのポイントでチャンピオンを決めました。
① 一貫性:キャラ固定・世界観固定は誰が強い?
【優勝】Kling O1(+Agent) 「Aというキャラが、次のカットでもAのまま」であることに関しては、Kling O1が頭一つ抜けています。特に顔の造形や服装のディテールを維持する力が強く、物語を作りたい人にとっては最も頼れる存在です。 次点でVidu Q2 Pro。こちらは「動画そのもの」を維持して変換するため、動きの一貫性は最強です。
② 参照:画像参照/動画参照/複数参照の自由度
【優勝】Veo 3.1 & Vidu Q2 Pro 「この画像みたいな雰囲気で」「この動画の動きを使って」という指示の通りやすさです。 Veo 3.1は「キャラの画像」と「背景の画像」を別々に渡せる(複数参照)点が優秀で、合成の手間が減ります。Vidu Q2 Proは動画を参照する能力が高く、リファレンス動画さえあればプロ並みの動きを再現できます。
③ 縦型:9:16で破綻しないのはどれ?
【優勝】Veo 3.1 多くのAIが「横長の動画を無理やり縦に切り取る」処理をする中、Veo 3.1は最初からスマホ画面(9:16)の構図を理解して生成します。 そのため「頭が見切れている」「重要な部分が画面外にある」という事故が起きません。TikTokやYouTubeショート用ならこれ一択です。
④ 音声:セリフ・効果音・BGMまで一気に作れるか
【優勝】Vidu Q3 これは比較になりません。現状、映像生成と同時に「セリフ(リップシンク付き)」と「環境音」を出せるのはVidu Q3だけだからです。 他ツールでは「動画を作る→音楽生成AIで音を作る→編集ソフトで合わせる」という3工程が必要ですが、Vidu Q3ならボタン一つで終わります。
⑤ 制作体験:量産できるUIか、職人芸が要るか
【量産なら】Runway Workflows 【職人芸なら】Runway Gen-4.5 同じRunwayでも真逆です。Workflowsは一度仕組みを作れば、誰でも同じクオリティで量産できる「工場長」の体験。一方、Gen-4.5は納得いくまで何度も試行錯誤する「映画監督」の体験です。 手間をかけずに数を打ちたいならWorkflows、こだわりの一発を狙うならGen-4.5が適しています。
“体感”レビュー:使ってわかった「気持ちいい瞬間/ダメな瞬間」
スペック表には載っていない、実際に何十時間も触り続けた筆者のリアルな感覚をお伝えします。
気持ちいい:思った通りに寄れる/回せる/揃う
最も感動するのは「カメラワークが通じた瞬間」です。 「ゆっくりズームインしながら、キャラが振り返る」といった複合的な指示が、Kling O1やVeo 3.1では驚くほどスムーズに決まります。 また、Vidu Q3でキャラクターが喋り出した瞬間や、Niji Journey V7で描き込んだアクセサリーが揺れた瞬間の「命が宿った感」は、一度味わうと抜け出せません。
ダメな瞬間:一貫性が崩れる/指示が無視される/意図しない改変が起きる
一方で、ストレスを感じる場面もまだあります。 よくあるのが「アイデンティティの崩壊」です。振り返った瞬間に顔が別人になったり、持っていたコップが消滅したりします。 また、Gen-4.5のような高画質モデルは「AI自身の作家性」が強く、こちらの指示よりも「AIが思うカッコいい映像」を優先して出力してくることがあり、コントロールに苦戦することもしばしばです。
避け方:基準素材、ショット分割、禁止事項の入れ方
これらの失敗を避けるための鉄則は3つあります。
- 基準画像を固定する:毎回プロンプトでキャラを説明せず、必ず「正解の画像」を読み込ませる。
- ショットを短くする:10秒の長回しは破綻の元です。3〜4秒の短いカットを繋ぐ方が、結果的にクオリティが上がります。
- 禁止事項(ネガティブプロンプト)を入れる:「変形しないで」「文字を出さないで」といった禁止ルールを事前にセットしておく(具体的なテンプレートは次の章で紹介します)。
用途別:結局どれを買う/触る?(迷う人向けの最終回答)

「全部は契約できない! お金も時間も有限!」という人のために、あなたの**「作りたいもの」**に合わせたファイナルアンサーを用意しました。
迷ったら、この基準で選んでください。
SNS運用(毎日投稿)向き:Veo 3.1 × Workflows
【選ぶ理由】「質」と「量」の両立 TikTokやInstagramリールで毎日投稿するには、いちいち手作業で作っていられません。
- Veo 3.1:スマホ画面(9:16)に完璧にフィットする動画を生成。
- Workflows:その作業を自動化。 この組み合わせは、いわば「動画量産工場」です。「寝ている間に翌日分のショート動画を10本ストックしておく」といった運用が唯一可能です。
シリーズ動画(継続IP)向き:Vidu Q2 Pro(V2V)
【選ぶ理由】「キャラ崩れ」からの解放 YouTubeアニメや連続ドラマを作りたい場合、最大の敵は「カットが変わると顔が変わる」現象です。 Vidu Q2 Proの「Video-to-Video(動画変換)」機能を使えば、自分がスマホで撮影した演技を、そのままアニメキャラやCGに変換できます。動きの土台が実写動画なので、何百本作ってもキャラクターの動きや演技がブレません。
会話劇・アニメ風ショート向き:Vidu Q3(音声同時生成)
【選ぶ理由】編集時間の「時短」 漫才形式の動画や、キャラクターが喋る解説動画を作りたいならコレ一択です。 通常なら「①動画を作る→②音声ソフトで喋らせる→③編集ソフトで口の動きを合わせる」という3工程が必要ですが、Vidu Q3なら「セリフを入力して生成」のワンクリックで終わります。編集作業が嫌いな人にこそおすすめです。
MV・映画風の一撃向き:Runway Gen-4.5 i2v
【選ぶ理由】圧倒的な「画力」 ミュージックビデオのサビや、映画の予告編のような「ここぞ!」というシーンに使ってください。 細かい動きの指定は苦手ですが、光の表現、質感、空気感は世界一です。「たった5秒で視聴者を釘付けにする映像」が欲しいなら、迷わずGen-4.5を選びましょう。
イラスト主導の作品向き:Niji Journey V7
【選ぶ理由】「絵」へのリスペクト あなたが描いたイラストや、生成したお気に入りの一枚絵を動かすならNiji V7です。 他のAIは、動かす瞬間に勝手に立体感を足したり、タッチを変えたりしがちですが、Nijiは「その絵柄のまま」動かしてくれます。繊細な髪の毛や、独特な塗りを守りたいクリエイター向けのツールです。
キャラ固定で画像→展開向き:Kling O1+Agent
【選ぶ理由】「うちの子」の再現率 「キャラクターの顔画像はある。これを色々なシチュエーションで動かしたい」という場合はKlingが最適です。 参照画像の再現度が非常に高く、「この顔のまま、カフェでコーヒーを飲んで」「この顔のまま、走って」という指示を忠実に守ります。Agent機能を使えば、チャット形式で相談しながらシーンを広げていけるので、監督気分で制作が進みます。
失敗しない試し方:1時間で差がわかる検証セット

「ツールが多すぎて、結局どれが自分に合うかわからない」 そんな時は、あれこれ手を出す前にたった1時間の「検証セット」を試してください。これをするだけで、自分にとっての「神ツール」がすぐに判明します。
同一素材で比較(同キャラ・同シーン・同尺)すると差が露骨に出る
多くの人がやってしまう失敗が、ツールごとに違うプロンプトや画像を使ってしまうことです。これではツールの実力がわかりません。
必ず「同じ条件」でテストしてください。
- 同じ画像(顔がはっきり写った1枚)
- 同じ指示(例:「カメラに向かって微笑む」)
- 同じ秒数(例:5秒)
これを全ツールに投げると、驚くほど差が出ます。「Aは顔が崩れたけど、Bは完璧に維持した」「Cは動きが滑らかだけど、Dはカクカクした」といった特徴が一発で可視化されます。
一貫性が欲しいなら「参照>文章量」:長文で殴らない

「AIに詳しく説明すれば、思い通りの絵が出る」というのは過去の話です。今のAIは、言葉よりも「画像」を信じます。
キャラクターの服装や髪型を10行の文章で説明するよりも、そのキャラの画像を1枚「参照(Reference)」として渡す方が、100倍正確です。 特にKling O1やVeo 3.1のような最新モデルは、参照画像の読み取り能力が非常に高いです。プロンプト(文章)は「動きの指示」だけに使い、見た目の指定は「画像」に任せるのが、失敗しないコツです。
検証用プロンプトテンプレ(目的→制約→カメラ→質感→禁止)

テストをする際に、コピペして使える「最強の型」を用意しました。この順番で書くと、AIが迷わずに動いてくれます。
Plaintext
【1. 主語と行動】
(例) A young woman walking down a busy street, looking back at the camera naturally.
(翻訳:若い女性が賑やかな通りを歩き、自然にカメラを振り返る)
【2. カメラワーク】
(例) Eye level shot, slow motion, shallow depth of field.
(翻訳:目線の高さ、スローモーション、背景ボケ)
【3. 質感・ライティング】
(例) Cinematic lighting, photorealistic, 4k quality, highly detailed.
(翻訳:映画のような照明、実写風、4K品質、高精細)
【4. 禁止事項(--no)】
(例) --no blur, distortion, morphing, text, extra fingers
(翻訳:ブレ、歪み、変形、文字、余計な指 を禁止)
まとめ:2026年は「生成」じゃなく“制作”の時代に入った
2026年1月、動画生成AIは完全にフェーズが変わりました。
これまでは「AIが作った面白い映像」を楽しむ「生成(Generation)」の時代でした。 しかし今は、自分のイメージ通りの映像をコントロールして作る「制作(Production)」の時代です。
伸びるのは:統合UI/複数参照/V2V編集/音声統合

これからの数ヶ月で主流になるのは、画質の競争ではありません。
- 統合UI:あちこちのサイトを行き来しなくていい
- 複数参照:キャラと背景を別々に指定できる
- V2V編集:撮影した動画をアニメやCGに変える
- 音声統合:音まで勝手につく
これらを備えたツール(今回紹介したVidu Q3やRunway Workflowsなど)が、クリエイターの標準装備になっていくでしょう。


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