Googleの音楽生成AIが“曲作り”に踏み込んだ Lyria 3 Proで3分楽曲の時代へ

2026年3月25日、Googleは新しい音楽生成AI「Lyria 3 Pro(リリア・スリー・プロ)」を発表しました。

これまで、AIに音楽を作らせるといえば「SNS用の短いBGMを数秒だけ作る」といった実験的な使い方がメインでした。しかし、今回Googleが発表したLyria 3 Proは、最大3分という「1曲まるごと」の長さを生成できるのが最大の特徴です。しかも、ただ長いだけでなく、「ここはイントロ」「ここはサビで盛り上げる」といった曲の構成まで細かく指示できるようになりました。

この記事では、個人のクリエイターから企業の動画制作まで、幅広い層に影響を与えそうなこの新しいAIの全貌を、わかりやすく解説していきます。


目次

Googleは音楽生成AIを“遊び”から“制作ツール”へ進めた

これまでの音楽生成AIは、ランダムに作られた短いフレーズを楽しむような、どこか「おもちゃ」のような側面がありました。しかしGoogleは、Lyria 3 Proの登場によって、AIを本格的な「楽曲制作の道具」へと押し上げようとしています。

最大3分の楽曲生成が意味するもの

一般的なポップスやロックの楽曲は、だいたい3分から4分程度の長さで構成されています。Lyria 3 Proが「最大3分」の生成に対応したということは、つまり「人間が普段聴いている音楽と同じボリューム感のものを、AIが最初から最後まで作り切れるようになった」ということを意味します。途中でプツッと途切れてしまう不自然さがなくなり、1つのまとまった作品として完成させることができるのです。

イントロ、Aメロ、サビ、ブリッジまで指示できる強み

ただ3分の音を垂れ流すだけでは、良い音楽とは言えません。Lyria 3 Proのすごいところは、「構成を理解している」点にあります。 例えば、「静かなイントロから始まって、Aメロ(ヴァース)でボーカルが入り、サビ(コーラス)で一気に盛り上がり、間奏(ブリッジ)で落ち着かせる」といった、プロの作曲家が考えるような設計図をプロンプト(指示文)で伝えることができます。タイムスタンプを使って「1分20秒のところからサビを入れて」といった細かいコントロールができるため、自分のイメージ通りの曲展開を作りやすくなりました。

短いBGM生成とは別物になりつつある理由

これまでのAI音楽は「どんな曲ができるかはお楽しみ」というガチャガチャのような要素が強かったのに対し、Lyria 3 Proは「目的を持って曲をデザインする」ことが可能です。狙った構成、狙ったテンポ(BPM)やキー(音階)を指定できるため、映像の尺にぴったり合わせたBGMを作ったり、自分の書いた歌詞のストーリーに合わせて曲調を変化させたりと、実用性が格段に跳ね上がっています。

Lyria 3 ProとLyria 3 Clipは何が違うのか

今回の発表では、実は「Lyria 3」という大きな家族(ファミリー)として、用途に合わせた複数のモデルが用意されています。開発者向けに提供されている代表的な2つのモデルを比較してみましょう。

比較項目Lyria 3 ProLyria 3 Clip
主な用途本格的な楽曲制作、フルコーラスの作成SNS用BGM、高速なプロトタイピング(試作)
最大生成時間最大 3分最大 30秒
楽曲構成の指示イントロ、Aメロ、サビなど細かく指定可能基本的な雰囲気や曲調の指定が中心
音質48kHz ステレオ音声(高音質)高音質(短尺特化)
主な提供先Gemini(Google AIプラン)、Vertex AI、Google VidsなどGemini(一般向け)、各種APIなど

3分楽曲に向く「Lyria 3 Pro」

これまで解説してきた通り、最長3分のフルコーラス楽曲を作るためのフラッグシップ(最上位)モデルです。48kHzのステレオ音声という、そのままCDや配信で使えるレベルの高音質で出力されます。ボーカルの歌声やフルバンドの演奏を含め、全体の構成をじっくり練り上げて「ひとつの作品」を仕上げたいときに使う、いわば“本気モード”のAIです。

高速試作やSNS向けに強い「Lyria 3 Clip」

一方、「そこまで本格的な長さは必要ない」「とにかくパパッとアイデアを出したい」というときに活躍するのが「Lyria 3 Clip」です。こちらは生成できる長さが30秒に制限されていますが、その分動作が軽く、短い動画のBGMや、CMのジングル、あるいは作曲のアイデア出し(プロトタイピング)に最適です。

用途別に“作曲”と“量産”を分けたGoogleの狙い

なぜGoogleはわざわざモデルを分けたのでしょうか。それは、ユーザーがAIに求めるものが多様化しているからです。 TikTokやYouTube Shortsのような短い動画を作る人は「Clip」で素早く大量に音源を作り、じっくりとミュージックビデオを作りたい人や、本格的な音楽制作ツールの補助として使いたい人は「Pro」でこだわり抜く。このように、用途に合わせてAIを使い分けられるようにすることで、あらゆるクリエイターのニーズに応えようとするGoogleの戦略が見えてきます。

ボーカルも多言語も対応、“それっぽい音”で終わらない進化

ただ楽器の音が鳴るだけではありません。Lyria 3 Proは、人間の歌声や様々なジャンルの音楽を、驚くほどリアルに再現する力を持っています。AIが作った「それっぽいBGM」から、人が歌っている「本物の楽曲」へと表現力が大きく進化しているのです。

自然さとクリアさを押し上げた最新世代

今回発表されたモデルでは、公式に「48kHzのステレオ音声」が出力可能だと案内されています。これは、CD音質や現在の音楽配信サービスで使われているプロの音源と遜色ないクリアな音質です。ノイズが少なく、ボーカルの息遣いや楽器の細かなニュアンスまで自然に再現されるため、生成された音源をそのまま動画やコンテンツに組み込んでも違和感がありません。

ポップからファンク、モータウンまでまたげる表現力

Lyria 3 Proは、音楽のジャンルに対する理解度も非常に高くなっています。現代的なポップスやEDMはもちろん、ファンクや古き良きモータウン・サウンドのような、特有の「ノリ」や「グルーヴ」が必要なジャンルもプロンプト(指示文)から柔軟に引き出すことができます。さらに、ボーカルも多言語に対応しており、世界中のリスナーに向けた楽曲制作が可能です。

テンポ、歌詞の入り、終わりまで触れるコントロール性

作曲をする上で欠かせないのが「コントロールのしやすさ」です。Lyria 3 Proでは、BPM(曲のテンポ)やキー(音階)の指定ができるだけでなく、「どこから歌詞を歌い始めるか」「どのように曲を終わらせるか」といった細かいタイミングまで指示を出すことができます。これにより、ただAIにお任せするのではなく、クリエイターの意図をしっかり反映した曲作りができるようになっています。

GoogleはLyria 3をどこに広げるのか

どんなに優れたAIでも、一部の専門家しか使えなければ意味がありません。Googleは今回、Lyria 3 Proを誰もがアクセスできる様々なアプリやサービスに一気に組み込みました。個人から企業まで、目的に合わせて使いやすい場所が用意されています。

Geminiアプリで一般ユーザーにも開放

一番身近な窓口となるのが、普段使っている「Gemini」アプリです。18歳以上のユーザーであれば、テキストから音楽を生み出す体験が手軽にできるようになりました。30秒の楽曲生成(Lyria 3 Clip相当)は広く提供され、最長3分のフルトラック生成は、より高度な機能が使える「Google AIプラン」の加入者向けに提供されます。

Google Vidsで“動画に合わせて曲を作る”が現実に

動画制作アプリ「Google Vids」にもLyria 3とLyria 3 Proが統合されました。これにより、「この動画の雰囲気に合った、長さ2分15秒の明るいBGMが欲しい」といった要望に、AIがその場で応えてカスタム音楽を作ってくれるようになります。動画の尺に合わせてフリー音源を探し回る手間が省けるのは、非常に大きなメリットです。

Vertex AIとGemini APIで企業・開発者にも展開

企業が自社のサービスに音楽生成機能を組み込みたい場合に向けて、「Vertex AI」や「Gemini API」を通じた開発者向けの提供も開始されています。これにより、ゲームのBGMを自動生成するシステムや、ユーザーの入力に応じてリアルタイムに音楽が変わるインタラクティブなアプリなど、新しいビジネスの可能性が広がります。

ProducerAI統合で音楽制作の現場にも入り込む

さらに、共同音楽制作ツールである「ProducerAI」にも組み込まれました。これは、プロのクリエイターや本格的な音楽制作の現場でも、アイデア出しやアレンジの補助ツールとしてLyria 3 Proが使われることを想定した動きです。

便利さの裏で問われる、著作権と安全への配慮

音楽生成AIが進化するにつれて、「既存の曲のパクリにならないか」「アーティストの権利はどうなるのか」という不安の声も大きくなっています。Googleはこうした懸念に対し、技術とルールの両面で厳格な対策を打ち出しています。

エラーが出ることも?アーティスト模倣を避ける強力なフィルター

実際にこのAIを使ってみると、プロンプトに入力した歌詞の内容や曲調の組み合わせによっては、「生成エラー」が出て弾かれてしまうことがあります。これはシステムの不具合ではなく、著作権保護フィルターが正常に作動している証拠です。

Googleのシステムは既存の楽曲や詩と類似していると判定した場合、アーティストの権利を守るために自動的に生成をブロックします。「あの有名なアーティストの〇〇みたいな曲を作って」という直接的な模倣指示もできない設計になっており、もしエラーが出た場合は、歌詞やプロンプトの表現をオリジナルなものに修正することで出力できるようになります。

学習データの説明とGoogleの安全設計

AIが賢くなるためには大量のデータが必要ですが、GoogleはLyria 3の学習に「YouTubeおよびGoogleが利用権を持つ安全な素材」を使用していると明言しています。出所不明なデータを無断で使うのではなく、権利関係がクリアなデータをもとにAIを構築することで、ユーザーが安心して商用利用や公開を行える環境を整えています。

SynthIDによる電子透かしの役割

生成されたすべての楽曲には「SynthID(シンセアイディー)」というGoogleの技術を使って、目に見えない(耳に聞こえない)電子透かしが埋め込まれます。これにより、その音声が「AIによって生成されたもの」であると後からでも機械的に識別できるようになっており、フェイク音声の拡散防止や透明性の確保に役立てられています。

Lyria 3 Proは音楽制作をどう変えるのか

短い実験的なクリップから、構成を練り上げた3分のフルトラックへ。Lyria 3 Proの登場は、音楽を作るという行為のハードルを劇的に下げる可能性を秘めています。

BGM生成から“楽曲設計”支援へのシフト

これまでのAIは「素材を作る」のが仕事でしたが、Lyria 3 Proは「楽曲を設計する」段階まで踏み込んでいます。楽器が弾けない、楽譜が読めない人でも、「静かな入りから、サビでストリングスが入って盛り上がる感動的な曲」といったディレクション(監督)をすることで、1つの作品を世に送り出すことができるようになります。

動画、広告、SNS、プロトタイピングで広がる用途

動画のバックグラウンドで流すBGM、商品の雰囲気に合わせた広告音楽、SNSのショート動画用キャッチーなフレーズ、そしてプロのミュージシャンがデモ音源(プロトタイプ)を作る際の壁打ち相手として。Lyria 3 Proは単なる完成品を出力する魔法の箱ではなく、あらゆるクリエイターの「創作の相棒」として、私たちの身近なツールになっていくはずです。

参考元URL一覧

【公式・一次情報】

【補助的な報道ソース】

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